ThinkPadの電源を入れた瞬間、ESCキーのLEDだけが光って画面は真っ暗。何度電源ボタンを押しても状況は変わらず、「壊れた?」「データは?」と焦りが込み上げてくる——。
この症状、実は原因が単なる帯電からBIOS破損まで幅広く、対処法を間違えると状況を悪化させるリスクがあります。特にBIOS更新の失敗が原因の場合、電源ON/OFFを繰り返すと二次故障を招くことも。
本記事では、X1 Nano Gen1で多発している具体的な症状パターンや修理費用の相場まで、詳細な調査に基づいて解説します。
📌 この記事で分かること:
- 自分で試せる対処法(リセットホール・放電)の正しい手順
- 修理が必要かどうかの判断基準
- 修理前に確認すべき「BitLocker回復キー」の重要性
読み終える頃には、無駄な出費を避けて最適な対処を選べるようになります。
結論を先に言うと、帯電が原因ならリセットホールで数分で直ります。ただし、BIOS破損が疑われる場合は「やってはいけないこと」があります。まずは症状のパターンから確認していきましょう。
ThinkPadのESCキーが点灯して起動しない症状とは

この症状の典型的なパターン
この症状には、いくつかの共通したパターンがあります。
- 電源ボタンを押すと、ESC(またはF1、F4、CapsLock)のLEDが点灯する
- 画面は真っ暗なまま、何も表示されない
- ファンが回らない、または一瞬回って止まる
- 電源ランプは点灯しているが、BIOSすら起動しない
- しばらく待っても状況が変わらない
この症状が報告されている機種の例としては、X1 Carbon、X1 Yoga、X1 Nano、L380、L390、ThinkPad 13などがあります。ただし、これらに限らず幅広い機種で発生する可能性があります。
キーボードLED点灯はエラーコードの可能性がある
ThinkPadの一部機種では、ESC・F1・F4・CapsLockの4つのLEDを使って、4ビット(0000〜1111)のエラーコードを表現する仕組みがあります。
点灯パターンの例:
| パターン | 考えられる原因 |
|---|---|
| ESCのみ点灯 | POST初期段階のエラー、Fnロック関連 |
| ESC+CapsLock点灯 | メモリ関連エラーの可能性 |
| 複数キーが同時点灯 | 深刻なハードウェアエラー |
| 点滅を繰り返す | 診断コードとして意味を持つ場合あり |
ただし、この診断コードは全機種共通の仕様ではありません。主にThinkPad 13以降の一部モデルで採用されているもので、機種によって意味が異なる場合があります。確実な判断には修理診断が必要です。
まず試すべき対処法【自分でできる】
緊急用リセットホールを使う(最も効果が高い)
バッテリー内蔵型のThinkPadには、本体底面に「緊急用リセットホール」という小さな穴があります。フリーズや帯電が原因の場合、これで復旧するケースが多いです。
手順:
- ACアダプタを外す
- 本体底面のリセットホール(直径約1mmの小さな穴)を探す
- 爪楊枝やペーパークリップを伸ばしたもので、穴の奥を5秒間押す
- 30秒ほど待ってから、ACアダプタを接続して電源を入れる
リセットホールの位置(機種別):
| 機種 | リセットホールの位置 |
|---|---|
| X1 Carbon Gen5〜 | 底面中央付近 |
| X1 Yoga Gen2〜 | 底面、やや右寄り |
| T480 / T480s | 底面、バッテリー付近 |
| L380 / L390 | 底面中央 |
| E14 / E15 | 非搭載(後述の放電で対応) |
穴は非常に小さいため、懐中電灯で照らすと見つけやすいです。爪楊枝より、ペーパークリップを伸ばしたものの方が頑丈で押しやすいかもしれません。
完全放電を試す
リセットホールがない機種や、リセットホールで改善しない場合は、完全放電を試します。
手順:
- ACアダプタ、USBデバイス、外付けモニターなど、すべての周辺機器を外す
- 電源ボタンを30秒〜90秒間、長押しする
- そのまま10分以上放置する(念入りにやるなら30分)
- ACアダプタを接続して電源を入れる
なぜ放電で直ることがあるのか:
パソコン内部には電気が溜まることがあります(帯電)。この帯電が原因で、電源ボタンを押しても反応しない、画面が真っ暗、LEDだけ点灯して先に進まない、といった症状が起こります。
放電で直った場合は故障ではないので、再発しても同じ方法で対処できます。
外部モニターに接続して画面出力を確認
HDMIケーブルやUSB-Cケーブルで外部モニターに接続し、映像が出力されるか確認します。
- 外部モニターに映る場合:本体ディスプレイまたは内部ケーブルの故障
- 外部モニターにも映らない場合:マザーボードやBIOSの問題
外部モニターに映る場合は、液晶パネルの交換で対応できる可能性があります。
原因を特定する方法
SmartBeep機能で診断する(対応機種のみ)
ThinkPadの一部機種には「SmartBeep」という診断機能が搭載されています。電源投入時にビープ音やメロディが鳴る場合、スマホアプリで解析できます。
SmartBeep診断の手順:
- スマホに「Lenovo PC Diagnostics」アプリをインストール
- Android 12以降のみ対応(iOSは非対応)
- アプリ名は「Lenovo PC Diagnostics 2.0」の場合もあり
- ThinkPadの電源を入れる(起動しなくてもOK)
- アプリを起動し「音声診断」または「SmartBeep」を選択
- スマホのマイクをThinkPadのスピーカー付近に近づける
- ビープ音やメロディが鳴ったら、アプリが自動解析
- 画面にエラー内容と対処法が表示される
SmartBeep対応機種の例:
- ThinkPad X1 Carbon Gen5以降
- ThinkPad X1 Yoga Gen2以降
- ThinkPad T480 / T580以降
- ThinkPad L380 / L480以降
2017年以降のモデルが中心です。ビープ音が鳴らない機種では使えません。
LED点灯パターンから推測する
SmartBeepが使えない場合でも、LED点灯パターンである程度の推測ができます。
- ESCのみ点灯:Fnロック関連、またはBIOS初期化エラーの可能性
- 複数キー(ESC+F1+F4+CapsLock)が同時点灯:深刻なハードウェアエラーの可能性
- 点滅パターンがある場合:4ビットの診断コードとして意味を持つ場合も
- 一定時間後にすべて消灯:BIOS破損の典型パターン
繰り返しになりますが、機種により仕様が異なるため、確実な判断には修理診断が必要です。
原因別の対処と修理の目安
BIOS更新の失敗
Windows Update経由でBIOSが自動更新され、その途中で問題が発生すると、この症状になることがあります。
X1 Nano Gen1で多発している症状パターン:
2024年以降、ThinkPad X1 Nano Gen1で同様の症状が複数報告されています。
共通する症状:
- 電源を入れるとキーボードバックライトが点灯
- Fnキー、ESCキー、CapsLockキーが順番に点灯
- その後、FnキーとESCキー、CapsLockキーの順で消灯
- 電源ランプは点きっぱなし、画面は真っ暗
バリエーション:
- 数秒後にESCキーが点灯し、液晶バックライトが点滅する
- キーボードライト・液晶に変化がない
- 「Launching the Startup Interrupt Menu」と表示されてフリーズする
この症状はWindows Update経由のBIOS自動更新後に発生することが多く、BIOSチップの修復が必要です。
重要な注意点:BIOSが壊れた状態で電源ON/OFFを繰り返さないでください
BIOSが破損している状態で何度も電源を入れると、チップセットに異常なデータが送られ、二次故障を引き起こす可能性があります。最悪の場合、BIOSは修復できてもUSBが使えない、LANが使えない、キーボードが反応しないといった後遺症が残ることがあります。
画面が映らなくても、電源ボタンを押すのは1〜2回までに留めてください。
BitLocker回復キーについて(重要):
ThinkPadでBitLocker(ドライブ暗号化)が有効になっている場合、BIOS修理・書き換え後の初回起動時に「BitLocker回復キー」の入力を求められることがほとんどです。
特にX1 Nano Gen1などの機種はBitLockerがデフォルトで有効になっており、購入時から暗号化されている可能性があります。
回復キーの確認方法:
- Microsoftアカウントにログイン → aka.ms/myrecoverykey
- 会社支給PCの場合は情報システム部門に確認
回復キーがないとWindows起動不可となり、データ救出も困難になります。修理に出す前に、必ず回復キーを控えておいてください。
CMOS電池(内蔵電池)の消耗
長期間放置したPCや、リースアップ品(企業で3〜5年使われた後の中古品)で起こりやすい問題です。
症状:
- 「Press F1 to Resume」が表示されて止まる
- 日時がリセットされる
- BIOSの設定が毎回初期化される
CMOS電池の交換で直る場合があります。機種によって分解の難易度が異なりますが、ボタン電池(CR2032など)を交換する作業です。自信がなければ修理店に依頼してください。
バッテリーの劣化・異常
バッテリーが完全に死んでいると、ACアダプタを接続しても起動しないことがあります。
確認方法:
- バッテリーを外せる機種なら、外した状態でAC接続して起動確認
- 内蔵バッテリー機種は、リセットホールを試した後、改善しなければ修理へ
中古で購入したThinkPadや、長期間使っていなかったPCでは、バッテリーが深刻に劣化していることがあります。
マザーボードの故障
上記すべてを試しても改善しない場合、マザーボード(システムボード)の故障が疑われます。
マザーボード故障の場合、自力での修理は困難です。Lenovoサポートまたは修理業者への依頼が必要になります。
修理に出す前に確認すべきこと
保証期間・延長保証の確認
Lenovo公式サイトでシリアル番号を入力すると、保証状況がわかります。
確認先:Lenovo 保証状況の確認
購入時にアクシデントダメージプロテクション(ADP)や延長保証に入っていれば、無償または低価格で修理できる可能性があります。法人向けPCの場合は、保守契約の内容を確認してください。
データのバックアップ状況
起動しない状態でも、SSD/HDD自体は無事なケースが多いです。ただし、修理に出すとストレージが初期化されることがあります。
Lenovoサポートに修理を依頼した場合:
- 診断・修理の過程でストレージが初期化される可能性がある
- 特にマザーボード交換の場合、データ消去されることが多い
- 「データは保証対象外」と明記されている
データを守りたい場合:
- 修理前にデータ救出サービス(専門業者)に依頼
- SSD/HDDを取り外して別PCで読み取り(自信がある方のみ)
- 修理業者に「データ保持を希望」と伝える(対応可否は業者次第)
修理費用と買い替えの比較
修理費用の目安(2025年時点):
| 修理内容 | Lenovo公式 | 専門修理業者 |
|---|---|---|
| 診断料 | 約22,000円 | 無料〜5,000円 |
| BIOS修復 | マザボ交換扱い | 15,000〜37,000円 |
| マザーボード交換 | 50,000〜80,000円 | 40,000〜60,000円 |
| CMOS電池交換 | 部品代+工賃 | 5,000〜10,000円 |
| バッテリー交換 | 15,000〜25,000円 | 10,000〜20,000円 |
Lenovo公式は純正部品を使用し、保証が継続するメリットがあります。一方、専門修理業者はBIOS修復(チップ書き換え)に対応できる場合があり、費用を抑えられる可能性があります。
買い替えを検討した方がよいケース:
- 修理費が5万円を超える場合
- 機種が5年以上前(第7世代Intel以前)
- Windows 11非対応機種
同等スペックの中古ThinkPadを購入した方が経済的なこともあります。修理見積もりを取ってから判断するのが賢明です。
自分で対処せず、すぐ修理に出すべきケース
以下の場合は、自己対処を試さずに専門家へ相談してください。
今すぐ修理に出すべき症状:
- 電源を入れた直後に焦げ臭いにおいがした
- 「パチッ」「バチッ」という異音がした
- 本体が異常に熱くなっている
- 液体をこぼした直後
自己対処で悪化するリスクがある状況:
- BIOS更新の途中で電源が切れた直後(電源ON/OFFを繰り返すと二次故障のリスク)
- 画面が真っ暗だが、HDDアクセスランプが高速点滅している(BIOS破損の典型パターン)
データが最優先の場合:
- 起動しないPCに重要なデータがある
- バックアップを取っていない
自己対処で状況が悪化すると、データ救出も困難になります。
よくある質問(FAQ)
- リセットホールを押しても反応がありません
-
リセットホールは押した感触がほとんどないため、正しく押せているか分かりにくいことがあります。ペーパークリップを奥まで差し込み、5秒以上しっかり押してください。それでも改善しない場合は、帯電ではなくハードウェアの問題の可能性が高いです。
- 放電はどのくらいの時間やればいいですか?
-
電源ボタンの長押しは30秒〜90秒、その後の放置は10分〜30分が目安です。時間をかけるほど効果的ですが、30分放置しても改善しない場合は、帯電以外の原因を疑ってください。
- SmartBeepアプリがiPhoneに対応していないのですが
-
残念ながら、Lenovo PC DiagnosticsアプリはAndroid専用です。iPhoneユーザーの方は、LED点灯パターンの目視確認で原因を推測するか、修理店に診断を依頼してください。
- BIOS更新の自動実行を止める方法はありますか?
-
Lenovo Vantageアプリの設定で「システム更新」→「BIOSの自動更新」をオフにすることで、Windows Update経由でのBIOS自動更新を防げます。BIOSの更新は手動で、ACアダプタを接続した安定した環境で行うことをお勧めします。
- 中古で買ったThinkPadでこの症状が出ました
-
リースアップ品(企業で使われた後の中古品)では、CMOS電池の消耗やバッテリーの劣化が起こりやすいです。また、BIOSパスワードが設定されたままになっていることもあります。まずはリセットホールと放電を試し、改善しなければ購入元に相談するか、修理店で診断を受けてください。
- 修理に出すとデータは消えますか?
-
Lenovoサポートに修理を依頼した場合、ストレージが初期化される可能性があります。特にマザーボード交換の場合は、データ消去されることが多いです。重要なデータがある場合は、修理前にデータ救出サービスの利用を検討してください。起動しないPCでも、SSD/HDD自体は無事なケースが多いです。
- 修理と買い替え、どちらがお得ですか?
-
修理費が5万円を超える場合や、機種が5年以上前(第7世代Intel以前)の場合は、同等スペックの中古ThinkPadを購入した方が経済的なこともあります。まずは修理見積もりを取り、中古相場と比較して判断してください。
まとめ|ESC点灯で起動しないThinkPadの対処フロー
最後に、対処の流れを整理します。
1. まず「緊急用リセットホール」を5秒押す
→ 改善すれば完了
2. 改善しなければ「完全放電」を試す
→ 改善すれば完了
3. 「外部モニター」に接続
→ 映ればディスプレイ故障
→ 映らなければ本体側の問題
4. ビープ音が鳴るなら「SmartBeepアプリ」で診断
5. 上記で解決しなければ修理へ
→ 保証状況を確認
→ BitLocker回復キーを控える
→ データのバックアップ状況を確認
→ 修理見積もりを取る
ESCキーが点灯して起動しない症状は、帯電やフリーズが原因であればリセットホールや放電で簡単に直ります。一方、BIOS破損やマザーボード故障の場合は修理が必要です。
まずは自分でできる対処を試し、それでも改善しなければ修理を検討してください。修理に出す際は、BitLocker回復キーの確認と、データのバックアップ状況の確認をお忘れなく。

